今、安全運転支援装置の数々が、通常装備される勢いで広まっています。とくに2021年11月で受付が終了となったサポカー補助金制度などで、官民が連携してその普及に努めたことが大きく影響しているのでしょう。補助金が終了しても、高齢者の運転不安や人為的ミスの軽減の観点から、サポートシステムはこれからも広く求められることが考えられます。
この安全運転サポートシステムを作動させるために、車体にたくさんのセンサーが取り付けられており、ちょっとぶつけてへこんだくらいなら放っておこうと考えると、実は大変なことになるかもしれないのです。
今回は、自動ブレーキ装備車の整備やその修理の重要性について解説します。
安全運転支援装置・自動ブレーキ装備の車とは？
安全運転サポート車、通称サポカーには自動ブレーキ装備されており、衝突の被害を減らすことに大きく貢献しています。とくに高齢者にはサポカーの運転が奨励されていて、近年問題視されている高齢者による交通事故の軽減に役立っています。
自動ブレーキが作動する仕組み
自動ブレーキシステムは、障害物、車両や歩行者との衝突の危険性があると判断したときに、警告音が鳴ります。その警告音が無視され、衝突の危険性が増した場合には減速するよう自動でブレーキがかかる機能です。
歩行者や車両を検知するのは車に搭載した赤外線レーザーやカメラです。またミリ波レーダーという電波を利用しているシステムもあります。これらのどれか、あるいは組み合わせたもので、障害となる対象を見つけ出し、衝突に危険な範囲なのかどうかを瞬時に判断します。
この感知システムの精度がほぼすべてのカギを握っているのです。今現在においては雨や霧といった天候や周りの状況によって、上手く作動しないこともあり、この感知の精度を上げるため、さまざまな会社がしのぎを削っています。精度が上がることは、機器が精密になっていることを意味しているので、より正確な調整が必要になってきます。
整備・修理されないと大変。正しくされるべき調整
車を軽くぶつけてしまって、普段なら放っておくケースも、場所によってはセンサーなどに狂いが生じてしまう可能性があることを忘れてはいけません。カメラの位置がずれると、必然的に感知システムにも狂いが出てしまいます。
また、整備や修理の際、センサーやカメラを取りはずして行う場合もあります。その時に正しい場所に設置し、正確に作動することの確認が必要です。
エーミング
整備や修理の後に絶対必要なのはこのエーミングです。エーミングとは、安全支援装置が正しく作動するための校正・調整作業のことです。修理のために部品を取りはずした、または板金塗装の際にフレームの修正をしたなどのケースで、レーダーセンサーやカメラの位置や動作に影響がでることがあります。それをきちんと正しく是正するために行う大切な工程です。
具体的には自動ブレーキ装置、カメラやセンサーそのものが関わる修理をする以外に、次のような修理を行ったときにはエーミングの必要があります。
- バンパーやグリルを交換した
- フロントガラスを交換した、あるいは着脱した
- ソアミラーを交換した、あるいは着脱した
- フレームを修正した（板金塗装）
一見関係ないように見える整備を行った場合にも、きちんとエーミングをしてもらうようにします。
アライメント調整
自動ブレーキを正しく作動させるには、自動車がまっすぐ走っていることがかなり重要で、まっすぐ走っていない状態でエーミングをしても、これは無意味です。
まっすぐ走るために行うのが、アライメント調整です。アライメントでさまざまな車の角度の調整を行います。自動ブレーキ機能に大きく関わるのは、スラスト角です。体の中心線と進行方向のズレを示すのがスラスト角で、これが0に近くなるよう調整します。
スラスト角がずれていれば、いくらセンサーやカメラが正しく判断しても、車自体が傾いているため、正しい危険判断ができません。つまり、たとえば車体が右に傾いている場合、進行方向になにか障害物があっても、車体が傾いているため実際カメラやセンサーが見ている対象は右手になります。そのため前方には何もない、と判断して進んでしまうのです。
車を修理した際には、エーミングだけではなく、アライメント調整が行われていることが大切です。
まとめ
安全運転支援装置である自動ブレーキ機能は、運転に自信のない人のためだけでなく、起こり得る人為的ミスによる事故を未然に防ぐため、すべての人に効果的です。これからもその需要は高まっていくことが予測されます。
ただ、自動ブレーキ機能を装備した車には特別修理や整備に気を配る必要があります。多くのセンサーやカメラが取り付けられているため、一見関係のない箇所の修理であっても安全支援装置が正常に働くかの確認は必須です。正しく作動しないと、危険な事故につながる可能性があります。
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